第10回・輝ける、偽・ジェルソミーナ通信大賞

今年もいいお話しをたくさん観ました



  

観たまんまで、まとめられないままに時間だけは経過していく(あたりまえだけど)...。
3月も終わろうかというこの時期になって、どうにかこうにか、中身が薄い文章をでっちあげ、08年の偽ジェも全て書き上げ、ようやく08年の総括です。
拝見したのは、のべで81本(何本かはダブって観ています)。プラスDVDで4本。
07年よりはほんの少しマシだったけど、寂しい数字となりました。それもこれも、仕方ないです。例によって、見逃した作品も数知れず。もったいないけど、またいつかチャンスも巡ってくるでしょう...。

それでは例によって、何の権威もへちまもありませんが、恒例の「偽ジェ大賞」。
各賞から発表していきます。

まず、欧州賞
「アフター・ウェディング」「潜水服は蝶の夢を見る」「once ダブリンの街角で」「やわらかい手」などが印象深かったです。毎年思うことだけど、ヨーロッパの作品はどれも質が高いですね。
そのなかでも特にインパクトがあったのは「ある愛の風景」。戦争は戦場でだけ行われているのではないということを痛烈に教えてくれました。米国映画の「さよなら。いつかわかること」も同じようなテーマを描いていましたね。戦争でかけがえのない命が奪われるのも悲惨だけど、命はあるものの心が破壊されてしまう、それもまた悲惨以外のなにものでもない。本当にツライ。でも、その辛さを正面から扱った秀作であったと思います。

次は米国賞
「ノーカントリー」「その名にちなんで」「さよなら。いつかわかること」「再会の街で」「イントゥ・ザ・ワイルド」など、これらはどれも一見の価値がある佳作揃い。アクションやラブロマンスものではありません。その分、深く深く考えさせられます。「その名にちなんで」もいいお話しでした、米国というよりもインドのお話しかもしれませんが、制作は米国なので...。
で米国賞。こちらも戦争に絡むお話しですが「君のためなら1,000回でも」。ラスト、ボクは涙が止まらなかった。人生の中でやり直せるチャンスは本当はない。でも、そんな中やり直せるのに近いチャンスがあれば、それがどんな困難なことでも、やっぱり人生に正面から向き合うべきだよね。最後の最後に台詞で泣かされました。

中華圏の映画からチャイニーズ賞
「ラスト、コーション」は、インパクトが大きかった! 「遠い道のり」ではグイルンメイに目が行くところだけど、やっぱりジア・シャオグオの圧倒的な存在感ですね。
そんな中でも選んだのが「トゥヤーの結婚」という大陸の作品。何とも興味深い展開で、驚くしかない。結婚とは何なのかという次元だけではなく、それどころか生きるとは何なのか。そんな普段はさっぱり忘れている根源的な問題を改めて思い出させてくれました。おすすめの作品ですね。

続いて韓国賞
公開されたのに観逃した作品もありましたが、08年も韓国の映画を多く拝見しました。正直云って韓国の映画はややお疲れ気味というか、沈滞ムードなのは否めません。その中でもキラリと光っていたのが「アドリブナイト」だったかな。これもアクションでもラブロマンスでもなくチープなつくりなんだけど、繊細なお話しを上手く表現できた作品であったと思います。もちろん主演のハンヒョジュが良かったことも大きいですね。
韓国賞には、年末も押し詰まってから拝見した「ハピネス」です。完成度の高さはもちろんだし、このところメキメキと頭角を現した感があるファンジョンミンとイムスンジョンがめちゃくちゃいい! 胸を打たれる!久々に映画を観て心が震えました!

で、日本賞
こちらは、何故か“死刑”を扱ったお話しがダブりました。その割にはあまりインパクトは無かったのかなぁ...。「休暇」「地球でたったふたり」をおすすめします。しかし、08年については拝見した本数も多くないし“該当作ナシ”とさせてください。

その他、アジアの作品では「迷子の警察音楽隊」は題材も良かったし、画面を流れる空気が良かったな〜。映画ならではのお話しでした。「881 唄えパパイヤ!」も意味不明ながら、エネルギーが溢れていて、最後にちょっぴりしんみり。普段はあまり上映されることが無い中華圏以外のアジア映画ですが、ほんとうはどんどん上映して欲しいです!(まぁ、観逃してもいるんだけど)


今度は個人賞。まず、男優賞
「ハピネス」「スーパーマンだった男」のファンジョンミン。彼の男臭さがボクは好き。あまり賢そうには見えないけど、いいんだなぁ...。派手さはないけど、芝居で勝負できる俳優さんですね。今後も大いに期待したいです!
振り返ると、このファンジョンミン、06年(第7回)にも「君は僕の運命 ユア・マイ・サンシャイン」でも栄えある(?)男優賞を受賞しているんですね。それだけ値打ちのあるいい役者さんだと思います!

女優賞、イムスンジョンにしようかと思ったけど、「遠い道のり」「言えない秘密」で大活躍。しかもボクに会いに(?)来日してくれた台湾のグイルンメイちゃんにします。思えば「藍色夏恋/藍色大門」で爽やかな女学生を演じていた彼女に出会い目が点に...。まだ制服も似合うけど、すっかりきれいな大人になったね。しかし、実物はほんとにかわいかったなぁ...(うっとり)。彼女も今後に大いに期待です!

では、恒例の行ってみたい都市大賞
こちらは都市じゃないけど、「イントゥ・ザ・ワイルド」のあのバスがあるアラスカの荒野。そう、もうこの地球にはほとんど荒野なんてないのかもしれない。でも、厳寒の季節にあの場所へ行けば、都会で暮らすボクが失ってしまった何かを見つけられるかもしれないな。

大賞次点
「ハピネス」。実は、いくら「8月のクリスマス」「春の日は過ぎゆく」「四月の雪」のホジノ監督の作品とはいえ、ほとんど期待してはいなかった。“時間があるから行ってみた”という程度。事実公開情報さえキャッチしていなかった。でもね、本当にいいお話し。ボク自身がだらしないだけに、余計に胸にこたえて、そして心が震えました!


では、例によって全く権威はありませんが、
ボクが独断で選んだ「第10回・輝ける、偽・ジェルソミーナ通信大賞」
「さよなら。いつかわかること」
08年ほど迷ったのは珍しい! 「ハピネス」「君のためなら千回でも」「ある愛の風景」「アフター・ウェディング」...。ずいぶん迷っちゃってなかなか決められなかった。本当にどれも秀作でおすすめなんです!
でも、やっぱり、自分自身の立場がいつの間にか代わったんですね。ボクもいつの間にか、誰にも何にも告げられなくて、一人ベッドで涙する側にまわったんだなぁ(しみじみ)。もちろん、スクリーンでご覧頂きたいのですが、ビデオやDVDでも十分お楽しみいただけます!


繰り返しになりますが、08年は映画を観るペースはそう悪くはなかったのですが、いかんせん“偽ジェ”を書くペースが遅すぎました。はっきり云って、観たけどその内容はすっかり忘れている作品も少なくありませんでした(すいません!)。だから、観終わってすぐはそこそこインパクトがあったものの、いざ書くときになって思い出せなくて紹介出来ませんでした。
09年もずいぶんと時間が経過しているのにもかかわらず、またしても書くペースが上がってきません。石に齧り付いても全て書くつもりですが、その内容はどうなのかは、ちびっと疑問です。でも、そうならないように頑張るぞ!

こうして“偽ジェ”を書き始めて11年目に入りました。最初はネットで公開するのではなく、メイルマガジンやったなぁ...、しみじみ。
その間、ボク自身の環境も大きく変わったし、映画を観る環境も変わりました。でも、変わらないのは、本当に面白くていい映画があるということです。そんないい映画を一本でも多く観て、読んでくださる方とその気持ちを共有出来ればいいなと思っています。

今後も末永く可愛がっていただくとともに、間違いや勘違いなどのご指摘やご意見を頂戴できますようお願いいたします!

おしまい。



◆◆ 輝ける、偽・ジェルソミーナ通信大賞 一覧 ◆◆
大賞 男優賞 女優賞 行ってみたい都市大賞
第1回(99年) 八月のクリスマス アリ少年
「運動靴と赤い金魚」
クリスティーナ・リッチ
「バッファロー66」
テヘラン
「運動靴と赤い金魚」
第2回(00年) 初恋のきた道 ホック
「フォーエバー・フィーバー」
スー・チー
「玻璃(ガラス)の城」
粟国島
「ナビィの恋」
第3回(01年) 不思議惑星ギン・ザ・ザ 朱旭
「こころの湯」
レニー・ゼルウィガー
「ベティ・サイズモア」
フィレンツェ
「冷静と情熱の間」
第4回(02年) 悪い男/Bad Guy ゲンとジュン
「able/エイブル」
宮沢りえ
「たそがれ清兵衛」
キューバのバス停
「バスを待ちながら」
第5回(03年) 一票のラブレター ティモシー・スポール
「人生は、くもりときどき晴れ」
チョンジヒョン
「猟奇的な彼女」
キシュ島
「一票のラブレター」
第6回(04年) 父と暮らせば 柳楽優弥
「誰も知らない」
寺島しのぶ
「ヴァイヴレータ」
LAのゲイバー
「コニー&カーラ」
第7回(05年) ミリオンダラー・ベイビー シュクラン・ギュンギョル
「少女ヘジャル」
田中裕子
「火火/ひび」
ウォンカのチョコレート工場
「チャーリーとチョコレート工場」
第8回(06年) 13歳の夏に僕は生まれた ファンジョンミン
「君は僕の運命
ユア・マイ・サンシャイン」
アンニ・クリスティーナ・ユーソ
「ククーシュカ
ラップランドの妖精」
ヘルシンキ
「かもめ食堂」
第9回(07年) 夕凪の街 桜の国 ウルリッヒ・ミューエ
「善き人のためのソナタ」
キムアジュン
「美女はつらいよ
カンナさん 大成功です!」
パタゴニア
「ボンボン」
第10回(08年) さよなら。いつかわかること ファンジョンミン
「ハピネス」
グイルンメイ
「遠い道のり」
「言えない秘密」
アラスカの荒野
「イントゥ・ザ・ワイルド」