皆既日食の恋/私の恋

こういう情けなさもいい



  

韓国の映画の中でう描かれる恋愛は、美しくスマートなものが多いけれど、こうやって“不器用な恋愛模様”(もちろん演じているのは美男美女なんだけど)を観ていると、なんだかホッとしてしまいますよね。
本当に韓国で皆既日食があったのかどうかは知らないけど、この皆既日食というのは単なるモチーフでしかなく、その皆既日食を見るイベントに幾組かの恋愛が収束して行きます。

なんと言ってもいいのは、全くお酒が飲めない女子大生が憧れの先輩に近づくために「お酒を飲むお稽古」をするエピソード。エピソードがいいのではなくて、この女子大生のイヨニちゃん、かなり可愛い!(ボクもこんな若いのと一緒に楽しくお酒を飲みたいもんです!)
以下、地下鉄の運転手(カムウソン)と数年前に別れた彼女(チェガンヒ)のエピソード。広告代理店の営業ウーマン(イムジョンウン)が熟年の子持ち独身ライター(リュスンニョン)に恋慕するエピソード(彼女が皆既日食を鑑賞するイベントを企画する)。世界中を放浪していた青年(オムテウン)が、皆既日食の日に彼女と電話する約束をしていたのだが...。

カムウソンのエピソード。とても上手くまとめられていて、過去と現在を巧に織り交ぜながら、ボクのようなもう取り返しの付かなくなったおっさんの心の琴線を刺激してくれる。恋愛が手が届く距離にある若い人たちにはこの感情がわかるかどうかは、ビミョーなような気もしますけどね。

韓国映画がお好きな方なら、この映画を観て思い出すのが「サッド・ムービー」だと思う。こういうオムニバス形式は、5から10年に一本だと思う。こう続けて制作されるとどうかな。別々に進行していたお話しが、一点に向けて収束して、ばらばらだと思っていた一つひとつのピースがぴたっとはまる、といったお話し上の技が欲しかったかな。各エピソードは素敵だけど、それをまとめるだけのものに欠けていたような気がします。

もっとも、悪いお話しではなく、心がギスギスしていて、ほんわかとした気分になりたいときに気軽に観て楽しめるお話しだと思います。
福岡で上映されたときは「皆既日食の恋」というタイトルでしたが、韓流シネフェスで公開されたときは原題に近い「私の恋」というタイトルでした。

おしまい