once ダブリンの街角で

成功とか幸せって何なんだろう?



  

情熱的でありながら、極めて抑制が効いたお話し。ただ、捉え方によっては物足りない感もあるかもしれない。この抑制の効き方は、主人公の年齢も関係しているかもしれない、ストリートミュージシャンと言っても、10代や20代ではなく、分別もついた30代なのだから...。

公開前から話題になっていたのに、ついつい観逃してしまい、ようやく高槻で拝見してきました(それまでにソウルでサントラだけは買っていたけどね)。
高槻駅前の商店街で9時前のスタート。お客さんは片手でも足りるくらいで、なんだか淋しかったなぁ...。

路上でギターの弾き語りをする男がいる。昼間は誰もが知るような曲を唄い、日が暮れると自分の曲を奏でる。彼が持つ年季の入ったフォークギターがいい。胴の部分が、ピックで削りすぎてしまったのか、(大きく)穴が開いている。楽器を大切しないのではなく、使い込んでいるという風情。
弾き語りで食べているのかと思ったら、郊外に家があり、家業の掃除機の販売・整備を父親を手伝いながらこなしているようだ。
そんな背景がすこしずつ画面から観えてくる。そして、彼は“運命の出会い”とも呼べる出会いに巡り会う。

運命だからこそ、必死にもなる。しかし、運命だからこそ醒めてもいるわけか。
冷静に振り返ってみると、そうか、このお話しはある意味サクセスストーリーでもあるのか。本人は何も成功を手にしたわけではないけれど、ある程度現実を直視しなおかつ、チャンスがあれば成功する可能性があるんだ。今はダブリンにいるけれど...。
いやいや、世の中、実はそんなに甘いものではないのかもしれない。
父親の温かい後押しや援助、銀行からの融資、バックのメンバーやレコーディング技師に恵まれるかどうかだってわからない。

「成功」って何なのか。そんなことを考えさせてくれる。
ロンドンで活躍することなのか、レコードが売れることなのか、ミュージシャンとして名声を得ることなのか...。それとも、この地で最愛の女性と暮らすことなのか...。
でも、グレン・ハンサードの情熱的な歌声にうっとりしながら画面を観ていると時が経つのも忘れてしまいます。サントラもなかなかいいです。第80回アカデミー賞の歌曲賞を受賞しているくらいですから...。

大きなスクリーンでなくてもある程度楽しめるので、DVDやビデオが出ればそちらでもお楽しみいただけると思います。

おしまい。