オリヲン座からの招待状

確かに美しいお話しだけど...



  

浅田次郎は稀代のストーリーテラーであることは間違いない。一体、アタマの中をどう捻ればこうも次々とお話しを創作出来るのだろうか。本当に驚くしかない。そんな著者の原作を映画化したのがこの「オリヲン座からの招待状」。ボクは原作は未読。

そう云えば、昔々、ボクがまだ幼かった頃、映画の幕間には籠を首から下げたお姉さんが、ピーナッツやアイスクリームを売りに来ていたような気がする。ただ、今とは違って、映画を観ることは数年に一度あるかないかのことだったので、あまり自信はないんだけど...。

戦後間もなくの京都の街。
繁華街としもた屋が連なる街角にあった映画館オリヲン座(そうか〜この頃って、映画館はかなり求心力がある施設やってんなぁ...)。このオリヲン座を巡る人間模様が描かれるわけだけど、ボクは「惜しい!」と思った。

きっと原作は、このオリヲン座からの最後の招待状を受け取った主人公がいて、華やかな頃のオリヲン座を振り返る趣向だったのだと思う(もちろん、映画でもそうなんだけど)。振り返ることよりも、その時代のオリヲン座を描くことに主眼を置きすぎてしまったかな。
何しろキャストが豪華。宮沢りえに宇崎竜童、加瀬亮、それに原田芳雄と来たら、やっぱり重すぎるのか。

それにしても、なくなるもの、消えていくものとは、なんともはかなくて美しいものなのか。それがどんなものであっても、長くあればあっただけ、それぞれに想い出は詰まっている。
そうであるからこそ、ボクは招待状を貰った二人にこそ(添え物ではなく)もう少し美しい想い出を語ってもらいたかった。その方がお話しに美しさが増したのではないでしょうか?

それはともかく、少し年代差があってノスタルジィに浸るとまでは行かなかったものの、美しいお話しであることは確か。時の流れの残酷さは確かに描かれているものの、それは世の常なんですね。
台湾の作品「楽日」と観比べてもらいたいな、なんて思ってしまいました。

おしまい。