俺たちの明日

青春には結論はない



  

KAFS(韓国アート・フィルム・ショーケース)という企画の2008年版。会場は渋谷のイメージフォーラム。企画上映だけど、普段の上映とまぁ変りないです。イメージフォーラムは何度かお邪魔したことがあるスクリーンですが、いつも一風変った作品が上映されていて、大衆的ではないと云うか、オピニオンがあると表現しましょうか、味がある映画館です。
例によってお客さんはまばらでしたけどね。

今回は「俺たちの明日」。
ある意味、夢がなく、リアリティでもあり、そしてネガティブでもある。でも「こんな世界もないよな」とも思ってしまう。もし、映画が“観る者に夢だか希望だかを与えるもの”だと定義されるのであれば、この「俺たちの明日」はその定義から外れてしまっている作品だと思う。でも、底辺でもなく、貧困でもなく、そのすれすれの線でうごめいている青春像を捉えているという解釈が成り立つのなら、この作品も映画としてアリなんでしょう、きっと。

一人の青年が没落していく。泥沼にはまり込んで行くさまを描いている。その視線はいやらしくもなく、若者に迎合するわけでもなく、かといって大人が見下す視線でもない。若者特有の勢いだとか憧れだとか短慮だとかそんなものを淡々と描き、彼らなりに見てしまう大人の世界を暴いているのかもしれない。そうそう、大人の世界だって、実は底が極めて浅く、実際はカネが全てなのだ。

学校を出て就職するわけでもなく、駐車場で洗車のアルバイトをしてその日を暮らしている。そんな彼の元に、嫁さんに逃げられた兄が子供を連れてきてその面倒を押し付けていく。どういう関係かはわからないが、兄弟のような存在であるギス(この人は西島秀俊みたい)と仲が良い。
そんなある日、母親からの過干渉(?)から逃げ出すように、そして過去の呪縛を断ち切るように、彼は家を飛び出し、連れ込みホテルで働き始める。ギスはそんな彼を諌めるのだけど...。
実は、かっこいいと憧れていたホテルの経営をする男もそうではないとわかり、ホテルに仕事でやって来ては指輪をなくしてしまう幼い少女との関係もわからなくなり、彼は苛立ちを隠しきれなくなる...。

青春には結論とかはないんだよね。
観ていて、気が滅入って、つくづく疲れてしまう作品だけど、好きな人には堪らないタイプのお話しかもしれません。韓国映画ということで、こってりとしたラブロマンスものを期待されているのなら、それらとは違いますね。日本語の台詞であったら、そのまま(少し古い)邦画としても通用しそうな感じです、はい。

おしまい。