エンジェル

ドンデン返しだよ、人生は



  

フランソワ・オゾン。ボクが映画監督として注目している数少ない一人。 何と言っても「スイミング・プール」の鮮やかな切れ味には惚れ惚れした。
が、すっかり錆付いているボクのアンテナ、この監督の新作公開中との情報をなかなかキャッチできなくて、終了間際にあわててテアトルに出かけました。

これを「どんでん返し」と呼ぶのであればそうなんだろうけど、人生そのものの「どんでん返し」はそれが鮮やかであればあるほど、残酷で強烈。まるでその人の一生の努力を否定してしまうものなんだなぁ...。

100年ほど前のイングランドが舞台。
平凡ながらも夢見る女子学生エンジェル(ロモーラ・ガライ)。通学途中にあるお屋敷「パラダイス」に憧れながら過ごす。
夢を見ているだけに見えた彼女、実は秘められた才能があり、手書きの原稿を出版社に送りつけたところ、たちまち流行作家の仲間入り。その後も続々と発表する小説は売れに売れ、彼女は一気に大金持ち!
そして、エンジェルは帰省した際に「パラダイス」が売りに出されているのを知り、そこを購入する。そして、パーティで知り合った自称画家のエスメと結ばれるのだが...。

編集者の妻であり発行人であるシャーロット・ランプリングがどうして眉をひそめながらもエンジェルに意見しないのかが不思議な気もした。でも、これは巧妙に仕掛けられた罠の一部にしか過ぎなかったのだと、後で気が付く。ダンディな編集者も、忠実な秘書も全てがお膳立ての一つにしか過ぎない。
才能の泉はいつしか枯れる。枯れるのは別の構わない、仕方ないものね。しかし、仕掛けられた罠に掛かったことに気が付かされた彼女は...。

ボクにとって、この映画の残念だったところは二つある。
まず、主人公のエンジェルを演じたロモーラ・ガライ。彼女が悪いわけではないけれど、エンジェルにはもっと小悪魔的な美人を配するべきだったとのではないかな。ロモーラ・ガライはちょっと田舎臭くて逞しさがある点において、ボクにはなんだか納得できないというか、とっても惜しいと思う。
二つ目は、オチに抑制が効きすぎている点。過度にドラマチックである必要はないけれど、あまりにもあっさりと描かれていて、ちびっと肩透かしを喰らったような気がするな。もちろん後からじわじわと効いて来るんだけど...。

編集者を演じるルーシー・ラッセルという俳優さん。なんだかポアロものやホームズもののTVドラマシリーズに出てもらいたいような気がしたのはボクだけなのでしょうかね。
何だか、さも面白くなさげに書いてしまったけれど、お話しそのものは良く出来ていて面白いです。

おしまい。