4ヶ月、3週と2日

この暗さの向こう側には何があるのか



  

2007年カンヌのパルムドール受賞作。
決して後味がいいお話しとは言えないけれど、この作品を通じて、ボクは女性のたくましさ、したたかさ、そして大変さを観たような気がしました。所詮、男は「して」「逃げる(or 立ち去る)」だけなんだなぁ。しんどいことやツライことは、みんな女性に押し付けてしまう。押し付けられてしまうからこそ身に付けなければならないたくましさやしたたかさがあるんだ。

ほとんど予備知識を持たずにスクリーンに向かい合ったせいもあるけれど、冒頭から数十分は何がどう展開されているのかわからない。
しかし、のんびりとした中にも妙な緊張感が漂う女子寮(しかも、大学の女子寮だとわかるのは大分後になってから)から始まる描写、やがて時計の針が進むに連れ、抜き差しなら無い事態へと発展して行く。
いかにも、東欧の共産主義政権下の雰囲気が色濃く漂う街角からホテルへと舞台は移り、ようやくお話しの輪郭がはっきりしてくる。

薄暗くて、抑圧された空気は、季節が冬なだけではないのだろう。
どこで何が起こるのかわからない。親友以外は誰も信じられない。いや、誰が親友なのかさえ時々わからなくなる。
それどころか、この時代であれば、ほんの一握りのエリートだけが許されたのであろう大学という場所。何事もなく優秀な成績を収めれば輝ける将来が保証された若者であっても、ストイックさと奔放さをここまで併せ持っていたことにも驚いてしまう。

そんな中、主人公(アナマリア・マリンカ)は、非合法な中絶を希望するルームメイトのために一人奔走する。
手術が成功するのか否かではなく、そもそも手術が受けられのかどうかすらわからない。やっとのことで探し当てた医者は、傲慢な男。即物的な対応しかしない。それどころか、当の本人であるルームメイトすら甚だ頼りない。
「どうして私がここまでしないといけないのか...」

ホテルでの一仕事を終え、せかされるように恋人の家に行き恋人の家族と会食をする。そのときの飾りのない不機嫌さがいい。
振り切るように家を出て、ホテルに戻ると、彼女にはまだ仕事(試練?)が待っている...。

お話しそのものよりも、お膳立てから尻拭いまで、まさしく大活躍のヒロイン。アナマリア・マリンカはいい。
聡明で、極めて意思の強そうな顔立ちが印象的。

街灯もなく、真っ暗な路地、アパートの階段。何もかもが暗くて、この先にも灯り一つない。今のルーマニアはどうなっているんだろう。街灯やネオンが不夜城のごとく輝いていることが何もいいわけではないけれど、体制が変わった今の姿を知りたいと思った。

極端に状況説明が少ないからこそ、画面を喰い入って観てしまう。
すっきりしないお話しだけど、ご覧になってもいいかもしれません。例によって、紹介するのが凄く遅くなったので、映画館での上映は終了しています。上映会や特集上映でかかる可能性も低くないので、そのチャンスではお観逃しないように。

おしまい。