約束/国境の南側

最近の冷麺のスープは味が落ちている



  

今度こんなお話しの映画が製作されるというウワサを耳にしていた時から楽しみにしていた作品。実は韓国版のVCDをすでに持っているんだけど、日本でも劇場公開されると聞き封を切らずに我慢して待っていた。劇場公開に先立ち11月に「大阪アジアン映画祭」でも上映されたけど、その時は映画どころではなかったので、泣く泣く見送った。その期待の割には、実は上映最終日にようやく千日前に駆けつけた。金曜の朝一番だったけど、広い広い劇場に5名ほどの入りとはいったい...。

何もなければ、何もしらなければ北側で幸せに暮らしていたであろう若い二人。やんごとなき理由のため、男は南へ行く。結婚を約束していた女性を北に残し、必ず南に呼ぶと約束をして...。

このお話しの凄いところは、体制やイデオロギーの違いを声高に叫んでいないところだろう。方向を間違えればプロパガンダ映画になってしまうのを上手く交通整理している。

チャンスンウォンは好きな俳優さん。
でも、この作品ではどうも肩に力が入りすぎていたかもしれない。ボクには北の方言というニュアンスがまるでわからないので、それを差し引いたとしても、もう少しリラックスした演技が欲しかったような気がする(何もアカンということではないけれど...)。
対して、ヨナを演じるチョイジンは初めてお会いしたけど、芯が強そうで、それでいて幸が薄そうな役をけなげに演じていました。ポスターに使われていた表情よりもずっといい。
でも、実はこの作品の本当の主人公はキョンジュ(シムヘジン)かもしれない。彼女には何の落ち度も無い。もちろんソノにもヨナにもないのだけど...。そんな中で見事に耐える、時には明るく、時には淋しく。

命からがら脱北を果たし、韓国へ入国してきたソノだけど、結局何もいいことがない。あてにしていた祖父は既に帰らぬ人となっていて、ヨナの脱北資金は捻出出来そうにない。それどころか、たちの悪い脱北ブローカーに定着資金を丸ごと持ち逃げされてしまう...。
そんなこんなで絶望していたソノ。ある雨の路上でキョンジュと出会う...。

もう少し待てなかったのか。いや、あの時のソノには何かの支えが必要だった。
どうしてヨナと会ったときに正直に告白出来なかったのか...。命がけで南に来たヨナにそれを伝えるのは、死ねと言うようなものだったに違いない。

ボクもたいがいハートが弱い。言わなければならないことを、出来れば自分の口からではなく、誰か他の人から伝えてもらいたいとさえ思う。だから、遊園地に行くソノの姿を見て、マクドでハンバーガーを食べるソノを見て、ボクの心は苦しくなり、痛くなる。
でも、ソノが言わなければ誰がヨナに伝えのか。それとも、キョンジュさえも裏切ってしまうのか...。痛い、苦しい、そして、切ない。
そして思うのは、どうして一人しか愛してはいけないのかということ。別に二人だって三人だって愛してもいいじゃないか。ソノにはヨナもキョンジュも選ぶことなんか出来ない...。

ちびっと切なくなるお話しです。まずまずのオススメ。 ヒラメちゃんことユヘジンも顔を出していますょ。

おしまい