オペラ座の怪人 

ぜひ、映画館で!



  

やっぱり映画は豪華で夢を見させてくれる仕掛けが欲しい。まして、それがミュージカルならなおさら。そして、ミュージカル映画を観るなら、家庭で小さいモニターにしがみついて、貧弱な音響設備で小さい音でしんみりと見てはいけない。
オルガン(パイプオルガン?)の音が耳をつんざき、その響きが直接五感を刺激し震わせるような、そんな迫力に酔いながら観たいのがこの「オペラ座の怪人」。
ストーリーそのものの弱さを歌の上手さと、豪華さと、迫力で充分に補っている。オープニングから10分ほどは映像のマジックで心から圧倒されてしまう。あの事故以来、廃墟となり塵溜めのようになっていたオペラ座。落ち葉がが、紙くずが舞う淋しい姿から、一転して全盛期の50年前の賑やかさを取り戻す。うーんこれこそ映画だ!

しかし、酔ってばかりもいられない。どうしたんだろう。語り部としてのこの映画の下手さはいただけない。「オペラ座の怪人」の舞台版を全く知らない人はいないという前提だったのだろうか? そりゃそうかもしれないが、もしそうだとしたら、それはあんまりだ。
どんなお話しが展開されるのかまるで知らない人にとって、この映画はかなり不親切。そして、観る側はとても不思議な感覚を味わうことになってしまう。
すなわち「クリスティーヌはどうしてファントム・怪人と子爵・ラウルとの間で揺れ動くのか?」これが全く理解できない(のではないでしょうか?)。
これでは酔えない。映画を観ているだけなら、ファントムは単なる変なおっさんがオペラ座の地下に住んでいるだけではないか、そんなおっさんを取るのか貴族のラウルを取るのか、そんなものクリスティーヌに選択の余地はないよね。
そんな疑問をよそに、物語りは突き進んでいく。

クリスティーヌ。どこかで観たことがあると思っていたし、ドリカムのヴォーカルの女性にも似ていると思った。調べてみるとこのエミー・ロッサム嬢、「歌追い人」でひたすら歌いつづける女の子だったのですね。そういえば、面影が残っている! しかもまだ17歳とは!   決してすごい別嬪さんではないけれど、天はニ物を簡単に与えちゃうのよね。この歌は本物です。しかも、17歳とは思えないお色気にスタイル。いいなぁ!
ファントムはいい。許す。しかし、子爵ラウルを演じるパトリック・ウィルソンはどうなんでしょう。ここで再び躓いてしまう。歌声はともかく、もう少し見た目が良い人はいなかったのか?
このラウルに、クリスティーヌは命を賭けた恋をするのか(ボクならしない)?

まぁ、全体を見れば、そんなに非をあげつらうような出来なのではなく、素直に良い作品ですし、是非映画館の巨大なスクリーンと充実した音響設備でお楽しみいただきたい、と思います。おすすめ!
家でビデオやDVDでご覧になられても、この映画の本質の1/3も楽しめたことにはなりませんよ!

この作品を楽しんだのが、広島の飲み屋が集中する繁華街にある「シネツイン2」。夜の回でしたが、そこそこお客さんが入っていました。
で、上映中に携帯がブルブル震える。メイルの着信。上映終了後、下界に戻るエレベーターの中でチェックすると...。イウンジュが亡くなったという知らせ。シックやったなぁ。ご冥福をお祈りします。

おしまい。