2046

決して面白くはない


  

「本当にこの作品が上映されるのだろうか?」
そんな当たり前の疑問がボクのアタマの中にあった。

もう何年も前からウォンカーウァイ監督が新作を撮り、その作品に日本のキムタクが出演する、そんな話しは耳に届いていた。しかし、例によってその後の続報は無い。
そのスケールの大きさから映画そのものが霧散してしまうことはないとは思っていたけれど、結局はひっそりと「楽園の瑕」のような感じで公開されるのかと思っていた。
それが、今年のカンヌのオープニングを飾り、そのまま日本でも結構なプロモーションが繰り広げられメジャーなスクリーンも使っての上映だ(びっくりした!)。

まぁ、そんな前置きはどうでもいいか。
この映画を観ながら考えていたのは...。
この映画で初めて香港映画を観るとか、今までウォンカーウァイの作品を観たことがない、そんな人がこの「2046」を観てどう思ったのか、どう感じたのか、いささか心配だということ。
ワケがわからなくて、非常に退屈した時間を過ごしたかもしれない。それとも、トニーレオンの格好良さに痺れた方もいるかもしれない(あんまり多くないと思うけど)。
正直、普通に観てこの「2046」は“面白い映画”ではない。

トニーレオン、チャンツィイー、ワンフェイ(フェイウォン)、コンリー、カリーナラウそしてキムタク、チャンチェン(どこに出てたん?)、そしてほんの少しだけマギーチャン。
1960年代の香港を舞台にして、一応文筆業のトニーレオンが主人公。彼を巡る数人の女性。
トニーレオンがいて、彼自身も含めて彼の周囲にいる女性たちもどこかに向かって流れていく。
結局「愛とは何なのか、愛するとはどういう意味なのか」そんな何時でも誰にでも身近にある問題を巡って思い悩み、そして答えが出ないまま流れていく。人たちも時間も。
そんなことが表現したかったのではないだろうか?
思わせぶりな表現、鏡を多用した映像。
掴みたいのに、何もつかめない。手にしたと思った瞬間に、それはスルリとてのひらから抜け落ちていく。そんな感じ。

どうもこの映画を言葉では上手く表現できない。

この映画の面白い点、話す言葉が面白い。
日本語、広東語、普通話が自在に語られる。少しの例外はあるけれど、基本的にその役者さんの母国語でセリフが用意されている。キムタクの日本語以外は字幕を追いかけてしまうので、そんなに違和感を感じないのだけれど、広東語と普通話での応酬などはちょっと興味があるな(もっとも、ほとんど聞き取れてはいないのだけど...)。

「とにかく観てください」とも言えない。
この「2046」だけを捉えて「香港の映画はおもんない(面白くない)!」というレッテルを貼られてしまっても困るしなぁ。
ただ、この「2046」で興味を持った方には「欲望の翼」や「花様年花」なども是非観てもらいたいですね。あるいは、ビデオやDVDで「欲望の翼」と「花様年花」を見てから「2046」をスクリーンで観る方が、よりいいかもしれません。
ストーリー以外にも、特にウォンカーウァイ監督が表現する“Old HONGKONG”は渋くてごっついカッコいい!

「LOVERS」でチャンツィイーと共演していたアンディラウ。彼はとても損な役回りだったのに、今回のトニーレオンはかっこいい。ちょっとラウが可哀想だなと思ったのは、きっとボクだけではないでしょう。

さて、この「2046」興業的にはどんな成績だったのでしょう? ちょっと気になりますね。
でも、興業的ではない評価が固まるのはもう少し時間がかかるかもしれません。もちろんボク自身もこの映画を咀嚼できずにいます。
この映画、素直にオススメではないのですが、ご自身でスクリーンに足を運んでいただくのが一番のような気がします。もうしばらくは各地のスクリーンで上映されているはずです。ぼやぼやしていると観逃す可能性が大なので、お早目にどうぞ!

おしまい。