「約束」

涙無くしては...


  

既に何回か書きましたが、2002年一杯で扇町ミュージアムスクエアでの映画の上映は終了してしまう。今回はそのサヨナラ公演。前回は洋画編で「桜桃の味」を観た、今回は邦画編で「約束」。1973年の松竹映画、主演は岸恵子・萩原健一。
遥か以前にこの映画がテレビ放映されたときに見た記憶があったんだけど、ヒトの記憶とはなんといい加減なものなんだろう。大筋は記憶の通りだったけれど、細かい点では相違がたくさんあったし、エンディングは全く違った。
まぁ、そんなものなのかもしれないけれど...。

今回、数あるサヨナラ企画の中でもこの「約束」を選んだのは、夏前に古い韓国映画「肉体の約束」を観たからだ。「約束」も「肉体の約束」も韓国映画「晩秋」のリメイク。「晩秋」を観る機会には恵まれないが、日韓のリメイク作を観比べる値打ちはあると思った。

「岸恵子は綺麗な人だったんだなぁ。そして、萩原健一(ショーケン)は記憶とは随分違って、垢抜けない兄ちゃんだったんだなぁ」と言うのが正直な感想。
そして、切ない映画だ。
冒頭に岸恵子が日本海側にある街のある公園で佇んでいる、それはショーケンに逢うためだ。彼を待っている岸恵子が切ない。そして何故岸恵子が彼をこんなところで待っているのかが今から語られる。観ているボクたちはどうしてこの公園に彼が現われないのかを今から知ることになる。

はっきり言って「いい映画」だ。
時代や時の流れによっていささかも色褪せない。もし、この映画のストーリーを全く知らずに観ていたら涙腺の弱いボクは涙ぐんでいたに違いない。

もう一つ今回改めて観たことによって知ったのは、この作品の舞台が急行「しらゆき」であること(今は廃止されてもう走っていない)。スピード優先の今では考えられないけど金沢〜青森(映画中では名古屋発着の設定になっているけど)を結ぶ昼行急行の「しらゆき」にボクも何回か乗った。そして最愛の列車なのだ。日本海側を黙々と走るこのディーゼル急行に哀愁を感ぜずにはいられない。ボクはこの列車に揺られて北海道を目指したものだ...。

殺人の罪で投獄されている岸恵子は模範囚。亡くなった母の墓参りを特別に許され、女性看守と列車に乗り故郷へ向かっている。そしてその道中、乗り合わせたのがまだ若いショーケン(萩原健一)。偶然同じ駅で降りる彼女に興味を覚えたショーケンは彼女に付いて一緒に墓参りをする。ただ乗り合わせて数時間を共にしただけなのに、彼女を気に入ったショーケンは再開を希望する。「あしたあの宿で会おう」と言い残して別れる。彼は彼で問題を抱えており、それを解決するためにこの街を訪れていたのだが、結果は物別れに終わり、その晩ショーケンは人を刺してしまう。
翌日、宿でショーケンを待つ岸恵子は刑務所に帰る時間が迫り、後ろ髪引かれながら宿を後にする。数時間遅れたショーケンは彼女が待っていてくれたことを知り、駅へ向かう。岸恵子に追いついた彼は再び同じ列車に乗り一緒に名古屋(刑務所)へ向かう...。そして、彼女が刑務所の門に入る間際「後、2年で刑期が終わる。2年後の今日、あの街の公園で逢いましょう」と二人は約束を交わす。しかし、その約束をしたすぐ後でショーケンは追いかけて来た刑事に捕まってしまう。でも塀の向こうへ行っていた岸恵子はそのことを知らない。
そして約束の日。岸恵子は公園で来るはずのないショーケンを待ちつづける...。

あぁ、涙無くしては観ることが出来ません。
色褪せないこの映画を再びスクリーンで観るチャンスはそうそう無いでしょう。運良くビデオででも観ることがあれば是非ご覧下さい。
そんなチャンスに恵まれたのに、お客さんはたったの4人。淋しいね。
そして、さようならOMS。

おしまい。