練習曲

ボクも旅に出てみたい



  

低予算で作られたのに07年に台湾での興行成績がNo.1だったというのが、この「練習曲」。それ以外の事前の情報はなるべく入れないように我慢していた。
聴覚障がいを持つ青年が、大学卒業を前にして自転車で高雄から台湾一週の旅に出る。

ボクが気に入ったのは、主人公が何気なく出発して、まるで何事もなかったような顔をして、所定の位置に自転車を置き部屋に戻るところ。
本当は、目的(旅に出る理由)を持ち、気負って出かけるのだろうけれど、そんな素振りはみせず、文字通りふらっと出かけた(自由に旅立てるのはうらやましいな)。それに、普通はあんな大きなギターケースに背負っては行かないでしょう...。

「遠い道のり」もこの「練習曲」もロードムーヴィ。台湾といえば、新幹線が開通して、スピード感や都会でのビジネスなどを連想してしまいがちだけど、こうして拝見すると、実に「ディスカバー台湾!」。違う台湾を再発見しようって感じ。それも、クルマや新幹線ではなく、自転車に乗って。
この映画でも何度も地名の表意板が出てくる(残念ながらボクにとっては全く馴染みが無い地名ばかりだったけど)。その地名を読み風景を見ながら台湾の方々は郷愁というか感慨を持たれるのでしょうね。そして、ペダルを踏む主人公に「もうちょっとや」とか「がんばれ」とか「この先の坂はキツイぞ」とか声援を送るんでしょう。
自転車の場合、その土地との距離感が、クルマや列車(ましてや飛行機!)などとは全く違う。いろんな人と出会い話しをし、助けて助けられる。いろんな人に触れ合いながら、台湾の人たちのある意味縮図に出会うわけだ。CMの撮影隊ご一行。ボクにはよくわからなかったけど、きっと何かの象徴だったんでしょうね。その他にも、解雇されたことを講義するために観光バスに乗っているおばさんの団体。公園で出会う家族連れ。日に何本も汽車が停まらない駅で出会った外人のモデル(なんでこんなところに?)。コンクリで固めた堤にスプレーで落書きをする若者。パンク修理を手伝ってくれたベテランのサイクリスト。そして、自分が彫った(?)人形を片手に語る老人...。どれもこれも、自転車ならではの出会い。
主人公が描くスケッチの素晴らしいこと!

あゝボクも心を癒してくれる旅に出たい、そう強く思いました。

再見!