ブレス

結局、どういうことなんだろう?



  

キムギドク監督が昨年のカンヌに出品した作品。ようやく日本でも公開。主演は、台湾のチャンチェン。

結局、どういうことなんだろう?
今までキムギドク監督の作品を観るたびに覚えていたインパクト。今回は感じられなかった。
「ん〜?」どこかで観たことがあるお話しだと思っていたら、少し前に拝見した「接吻」にとても似ている。同じ素材(テーマ)を扱っていながら、料理方法はずいぶん違うけどね。

で、どういう料理方法だったのか。
死刑囚との交流という非日常で特殊な状況下において、その動機付けが極めて曖昧で、(ボクには)伝わって来なかった。これは、とても大切なことで、観る側の理解をはるかに超越した世界をスクリーンで展開するだけに、お話しの動機がわからないと、とてもついていけない。そして、そこには、共感も生まれないし、感動も起こらないのだ。
だから、今回ばかりはキムギドク監督の作品としては“もうひとつ”だったのではないかな。チャンチェンが主演ということもあって、期待は大きかったんだけど...。若干の裏切られ感があったのは確かです。
ただ、一度は捨ててしまった白いシャツ。ラストではもう一度拾い上げたところに、今までにはない、将来への明るい兆しと捉えたのはボクだけではないでしょう(きっと)。

チャンチェン以外には、主演のチア「どこでお会いしたのかな〜?」と思っていたら、確か「海岸線/The Coast Guard」で海岸で恋人を撃ち殺されてしまう人(ヒラメちゃんの妹)を演じていた方でした。その旦那役のハジョンウは、前作「絶対の愛」で主人公の恋人を演じていた人ですね。同房の囚人たちは三人とも知らない方々。モニターを覗いていブザーのボタンを押す警備課長さんには顔が無かったけれど、もう少し役割を担って欲しかったな。

チャンチェン。台詞が一切無い。
主役がノドを痛めて声を発しないのは「悪い男」と一緒だね。
チャンチェンがいったいどんな思いを抱いているのか。何を思って面会に臨んでいるのか。同房の彼らに対するスタンスはどうだったのか...。残念ながらあんまり伝わってこなかった。芝居や演技が悪いのではなく、お話しの構造上仕方なかったのかもしれないけど、全てにおいて、余りにも受身でありすぎたのではないでしょうか。
すなわち、この役がチャンチェンであるべき必然性があったのだろうか? 少しもったいなかったような...。

チャンチェンやキムギドク監督のファンの方なら、観るべきかもしれないけど、そうではない方には積極的にはオススメできないような気がします。

おしまい。