まぶしい一日

韓国にいるんだから、ハングル喋れよ



  

「宝島」「母をたずねて三千里」「空港男女」の三本がセットになったオムニバス。
今年のシネマコリアはこの「まぶしい一日」のためにあったような気がした。
別に有名な韓流スターが出ているわけでもない、衝撃的なストーリーが展開されるわけでもない。それなのに、観る側の心理を微妙にくすぐる。そして、日韓の微妙な関係があぶりだされる作品。

上手く説明する言葉を持たないけど、三作とも日本と韓国の距離感の出し方が上手くて、韓国の作品なのにまるで日本人から見た韓国感が表現されている。
「母を〜」はそうでもないとして、他の2本、韓国で上映されたときに理解されたのだろうか、ちょっと心配になるほど。

病床にいる祖父に頼まれ、戦前祖父が暮らしていたという済州島にやってきた日本の女子大生二人組。祖父が木の根元に埋めたという“宝物”を探しに来た。
まるでおばかさんなこの二人。いろんなことを体験する。ここまでドン臭い人はいないような気がするけど、やっぱりいそうだ。その経験から二人が得たものは...。
導入部分のエピソードの描き方がもう一工夫あって、そこを台詞に頼らない演出が出来ていれば、なお良かったかもしれないけど、お仕着せがましくない話しの進め方は良かった。
スクーターの持ち主、救いの神に変身するのかと思わせておきながら、ただ変身しただけなのには驚いたけどね。
宝物は結局、象徴にしか過ぎなかった。でも、この二人の関係はどうなっていくんだろうと、後日談の方に興味があったりして...。
ひょっとしたら、原作があるのかもしれないなぁ。
特筆すべきなのは、主演のエイコを演じた杉野希妃の輝きでしょう。

「こんなことありか!」と思ってしまう。
日本人も日本も出てこないけれど、ジョンファンの頭の中にあるのは母親が働いている日本。いつもどこかに日本がちらついている。それは実態がなく、まるであると信じている天国のような存在としてジョンファンの心の中に存在している。
見ていて痛々しい。「早く目を覚ませよ!」と声を掛けたくなる。そんなに絶対に行きたい場所じゃないよ、日本は。果たして、ジョンファンは日本に行くことが出来るのか...。
そう思うと、最後のカットはいささか蛇足だったかもしれない。成長したジョンファンはトウキョウではなく、ソウルでこそ活躍して欲しいような気がする。これまた、後日談に興味があるなぁ。
それに、主演のキムドンヨン。この人、今後主役が張れる役者さんに育っていくような気がします。ツラ構えがいい!

面白さではこの「空港男女」が一番。
対比のさせ方が上手い。しかし、男女ともこんな人はいないよな、きっと。だけどいるかもしれないと思わせるのがこのお話しの上手いところなのかもしれない。
主演はイソヨン。「スキャンダル」に出ていた人。美しく成長していて、この人も今後大いに期待できそうですね。

日本と韓国の関係って微妙だな。
「韓国にいるんだから、ハングル喋れよ」という台詞、そのまま韓国を日本に、ハングルを日本語に置き換えれば、普通にボクが思ってしまうことで、そのままなら何の差別的発言でもなんでもないんだけど、そう単純に受け取れないところに両国の微妙な関係があるんだと、ボクは思いました。

ご覧になって面白いとか得をするとか、そんな作品ではありませんが、お時間があれば是非ご覧いただきたいと思いました。
映画の為のお話しではなく、日常を剥ぎ取ったような、そんな感覚のお話しです(これは、ちょっと言い切りすぎかな?)。
大阪では11月5日(日)に11:00から「なんでもアリーナ」で上映があるようです。


オマケの「けつわり」。もう少し頑張りましょう、って感じでしょか。
まるで安物の再現ビデオを見ているようで、意図もわからないわけではないけど、直球勝負の意欲が空回りしていて、普通の人が観てどう受け止めるのかまでは考えが至っていないような気がしました。もちろん、当初から劇場公開を念頭に置いて撮られたわけではないでしょうが...。


シネマコリア2006の大阪開催が終わってもう一月以上経過してようやく書けました。
ソチョンさんをはじめ関係者の皆さんはご苦労様でした。そしてありがとうございました。
日本での韓国映画を取り巻く環境は、数年前からは考えられないほど劇的に変化して、今後もどんどん変わっていくと思います。その中で、選りすぐりの貴重な映画の数々をまとめて拝見できる、ほんとうにありがたい企画です。いろんな困難もおありでしょうが、来年以降も是非よろしくお願いします!

あんにょん。