バッド・エデュケーション

生理的嫌悪感は無くなった?



  

なんとも不思議な作品。
愛憎ものかと思わせておいて、実は謎解きだったり、犯人探しではないけれど、どんでん返しが用意されている。
妙な味わいが残る。もちろんスカッとしたものではなく、妙に口の中に粘りつくようなそんな後味。

神学校とはどんな存在なのだろう。何のために、いくつで入学し、卒業すると何か資格が得られるのだろうか? そんな基本的な部分にいささかの疎さを抱えながら、映画は始まる。
スペインの色彩感覚にはいつもながら驚かされ、特に室内の壁紙や装飾には目を見張る。ボクの感覚とは全く違う。かと言って受け入れられないのではなく、ボクでは発想できない別の次元にある。そして、こんな部屋なら住んでみたいと思ってしまう。

神学校で仲良しだったエンリケとイグナシオ。この二人はエンリケが学校を去ったことで友情は途切れる。
10年以上の時を経て、エンリケは新進の映画監督として手腕を発揮していた。そんな彼の事務所へ訪ねて来た見知らぬ俳優志望の男。この男こそがイグナシオ。今や力を持つエンリケは表面上はイグナシオとの旧交を喜びながらも、適当にあしらい、イグナシオが携えてきた原稿を受け取り追い返してしまう...。

神学校時代の思い出、現在、そしてイグナシオの原稿の中の世界。その三つが交錯しながら語られ、ボクはそのパラレルワールドの中にずっぽりと嵌ってしまう。
神学校で何があったのか、今までイグナシオは何をしていたのか、そして原稿には何が書かれてたのか? 謎が謎を呼び、全ての話しが微妙に絡みあう。そして、少しずつ謎が明らかになっていく。

決してスマートさはない。どちらかと言うと武骨なつくり。
これって、結局はある男の野望を描いたものなのだろう。
その野望の果てには何が待っているのか。

とにかく、一筋縄では行かない。時間の進み方が異様に早く、この映画の世界に入り込んでしまったら最後、本当にあっと言う間に終映時間になってしまった(上映時間は105分)。
今まで、ゲイを扱う作品(特に「美少年の恋」)にはなんだか生理的な嫌悪感を覚えていたけれど、この作品ではそんなものを感じませんでした。それは、最初から構えていたからなのか、それともボクの中で免疫が出来たのか、それともボクの中で何かが変わったからなのでしょうか?

主演は、ボクがご贔屓のガエル・ガルシア・ベルナル。このベルナル君、出る作品によってどんどん芝居の幅が広がりますねぇ。今後ますますの期待です!

まずまずのお勧めですが「ゲイを描いた作品だ」ということは知ってからお出かけくださいね。

おしまい。