「BULLY/ブリー」

現実とヴァーチャルの境目は...


  

本当はこの日は4本観る予定にしていたけど、急用が入り後の予定はキャンセルし、一旦自宅に戻る。その用事を済ませ、その足でシネ・リーブル神戸のレイトショーへ向かう。
観たのは「BULLY/ブリー」。テアトル梅田で上映していたのに観逃してしまい、三宮までやって来た。日曜のレイトショーだからガラガラかと思っていたら20名ほどの入りでびっくり!

さて、映画のお話し。
予告編を数度見ただけで、あんまり予備知識を持たずに観たので、正直言って驚いた。
そうそう、青春ってなんだか意味も無くこうして普通の子供たちが暴走してしまうんだよな。その暴走を止めるのが、友人であり、親であり、学校であり、地域社会のはずなんだけど、それらはあまり機能していない。機能していないと言うよりも、あまりにも彼らには意識が無かった。
普通の子供たちが「犯罪者」に変わってしまう過程を描いた、ショッキングで興味深い作品。

フロリダ(だったかな? 西海岸かな?)のある街。
ここに住むハイティーンの男友達。二人は幼馴染で仲良し(腐れ縁?)。ボビーはいつも親分気取りで、来年には大学へ進学する。マーティはサーフィンは上手いがみそっかすで、ハイスクールはドロップアウトしてしまった。ボビーは気にいらないことがあると、いつもマーティに暴力を振るう。何でもいいとこ取りをしないと気がすまない。女性に対しても態度は同じだ。どこか見下したようなところがある。
前半はボビーとマーティとの微妙な人間関係が丁寧に描かれる。
このまま皆が大人になれば、何も問題は起こらなかった。だけど、マーティのガールフレンドが妊娠してしまってから微妙にバランスが崩れ始める(まぁ、それだけがキッカケではないけど)。

彼女がふと漏らしたひと言「ボビーを殺そう」。

本当に「殺す」気だったのか? 殺人を簡単に出来ると思っていたのか? ゲームやコミックの世界と取り違えていなかったのか?
いつもつるんでいる数人で計画が練り始められる。誰も本当に「ボビーを殺そう」だなんて思っていなかった。ほんの冗談のつもりだった。それなのに、計画だけが勝手に一人歩きし始める。

計画は恐ろしく杜撰(ズサン)。
そして発覚する過程も、信じられないほどいい加減で身勝手な行動の連続。
それほど「罪の意識」は希薄、どこかにあるリセットボタンを押せば、ボビーがこの世に戻って来ると思っていたのではないだろうか。

彼らだけが特別な存在ではないと思う。
確かにボビーも、ある意味では問題があったと思う。だけど、何も殺さなくても...、と思うのが普通の神経だ。そこに歯止めがかからなかったのは社会の問題だな。
それに、これはアメリカだけではなく、日本でだってもう既に起こっている。
現実とヴァーチャルとの境界が果てしなく希薄になり、善と悪、していいことと悪いことの判断がつかなくなっている。そして、愛情と錯覚してあり余るほど親から与えられるカネと時間。
う〜ん。背筋が冷たくなってくる!

衝撃を受け、暗い気持ちでスクリーンを後にしました。
しばらくしたらビデオかDVDになるでしょうから、興味があれば一度ご覧になっても損はしないでしょう。出来れば「ボウリング・フォー・コロンバイン」とセットでご覧になるのがいいんじゃないですか。
ただし、相当疲れます。

おしまい。