「青の稲妻」

中国の青年は悩んでいるのだ


  

ほんと「ようやく」って感じで観た「青の稲妻」。
大阪での上映をだらだらしているうちに見逃がしてしまい、もうこの映画には縁がないのかと思っていた。それに、あんまりイイ感想は耳に入ってこなかったしね。そうこうしているうちに、ふと目に止まった読売新聞(だったかな?)の映画評では絶賛されていた。
この監督、ボクの肌に合わないとわかっていながら「観たい」と思っていた。すると、三宮のシネ・リーブル神戸でモーニングショー上映されているではないか! 喜んで出掛けて行きました(ほんとは、その日の朝まで、行こうかどうしょうか迷っててんけどね)。
季節外れの台風が接近している朝、難解なジャジャンクーの作品を観る人は多くないとは思っていたけど、お客さんはボクを含めてたったの三人とは、ちと淋しすぎる。
前作の「プラットフォーム」も難解な映画だった。ウワサではこの「青い稲妻」輪を掛けて難解で退屈らしいのだが...。

結論を申し上げると「意外と良かった」。
あんまり難しくもなかったし、少なくとも退屈もしなかった。「プラットフォーム」よりも遥かにわかりやすい。
「ミッシング・ガン」や「ハッピー・フューネラル」を観て大陸の映画も洗練されてきたなと思ったけれど、このジャジャンクー監督はこれらの作品を撮った監督よりも一世代前になるのではないかな。まだ泥臭さやチープさが抜けきっていない、ちょっと前のリアリズムのある作風。しかし、訴えるテーマはまさに今の中国が抱える問題そのものを取り上げている。そんな世代だ。
中国の映画監督は、よく第○世代と表現されることがある。その各々をボクは認識しているわけではないし、このジャジャンクーが第何世代に属するのかも知らないけれど、「ミッシング・ガン」や「ハッピー・フューネラル」とは明らかに違っている。

まぁ、そんなことはどうでもいい。

舞台は山西省の大同。あまりメジャーではないけれど、一応観光地ですね(確か巨大な石で出来た仏像が有名なはず、ボクは行ったことがないけどね)。ここに住む20歳前の若い男二人が主人公で、この仲の良い二人がそれぞれ感じている、将来や今に対する行き場の無いあせりと苛立ちが今回のテーマ。
二人は仕事をしていない。仕事がないわけでも、働くのが嫌なわけでもないけれど、定職には就いていない。毎日タバコを吸って街でぶらぶらしている。
片方の男は学校を出てから何度か仕事に就いたが、どれもすぐに辞めてしまっている。まだ高校生の恋人は北京の貿易関係の大学へ進学する。自分も北京に行こうと軍隊への入隊を志願するが、健康診断ではねられてしまう。
もう一方の男は、偶然見かけた「蒙古王酒」のキャンペーンガールのお姉ちゃんに一目惚れしてしまう。この女性確かにルックスもスタイルもいいのだけれど、どこか垢抜けない面も併せ持っている。大同という片田舎で、顔役もやくざもないだろうけど、このお姉さんは一応街の顔役らしい男がついている。しょせんガキの相手はしてくれないと言うことか。

そんな二人の日々をスケッチしているのが、この映画。確かにテンポは遅く、観ていてイライラするかもしれない。でも、このテンポこそが大陸なんだなぁ。デートするビデオ部屋、女の父親の病院の一件と言い、まるで本題に関係が無いエピソードに随分時間を割いている。でも、そんな回り道こそが今の中国。一直線に目的に向かって突き進めない。いろんな合いの手が入り、行く手を邪魔されてしまう。
それにしてもこの二人の行く末はどうなるんや? そんな心配が頭をよぎった瞬間。きっちりとんでもない結末が用意されている。

う〜ん。中国の青年は悩んでいるんだなぁ。

おしまい。