「星に願いを。」

富樫森監督の新作は...


  

昔は好きな映画監督が何人かいて、彼らが新作を撮るのを楽しみにしていた。今ではそれほどでもなく、どっちかと言うと監督には割と無頓着。監督の名前が、観る観ないを選択する際の大きな決め手になることはほとんど無い。それは、腕のいい監督でも失敗作を作ることがあるのを知ったからだ。
ただ数少ない例外はある。その一人が富樫森監督。何気なく観た「非・バランス」で痛く心を打たれ、続く「ごめん」もいい作品だったから。この監督の優しい視線が好きになった。
そして、この日初日を迎えたのが「星に願いを。」。
お客さんが一杯なのに驚いた(狭い劇場だったけど)。どうやら主演している二人(竹内結子、吉沢悠)をお目当ての若いお客さんが多いようだ。日本の芸能界に徹底的に疎いボクは、この二人がどんな人なのかさっぱり知らなかった。やっぱり少しはTVを観ないとあかんなぁ。

この「星に願いを。」は、日本では2001年に公開された香港映画「星願〜あなたにもう一度」のリメイク(制作は1999年)。主演はセシリアチャン(最近どうしてるのかな?)とリッチーレンだった。
リメイクだけあって、ストーリーは香港版をほぼなぞっている。細かいデティールも生かしてあるのが嬉しい。エリックツァンが演じた近くの屋台のオヤジは國村隼が喫茶店のマスターで、オータムに横恋慕する医師・ウイリアムソーは高橋和也(「ハッシュ!」のお兄ちゃん)が扮し、それぞれいい味出している。
一番驚いたのはトマトジュース。リッチーレンはトマトジュースに一杯塩を振って飲む癖があり、この癖でエリックツァンはこの青年が蘇ったオニオンだと気付く。國村隼も、トマトジュースをジョッキで一気飲みする姿で、何かを感じ取る。
このようにメインのストーリーは香港版と同じだけど、舞台は函館に移している。

ストーリーは甘く切ない。
数年前、事故で視覚と声を失った青年・天見笙吾(吉沢悠)。彼は今も通院を続ける病院の看護婦・青島奏(竹内結子)にほのかに恋心を抱いている。奏は自暴自棄になった笙吾を立ち直らせ、苦しいリハビリを手助けしてくれた。彼女も笙吾に好意以上のものを感じていた。
そんなある日、笙吾は病院からの帰り道、交通事故に遭い絶命してしまう。
突然、笙吾を失ってしまった奏は、そうなって初めて自分が笙吾をどれほど大切に思っていたかを知らされる。そして、このショックから仕事ではミスを連発し、休暇を取り姉の家に身を寄せる。
その頃、笙吾は車庫で眠る路面電車の中で目を覚ます。
視力が戻り、声も出せる。突然、車内放送が流れる『流星が流れる晩に命を落としたあなたに、ささやかなプレゼント』だと言う。そして、放送は続く『数日間、現世に戻ることができる、但し、他人からはあなたが天見笙吾だとは見えないし、自分のことを他人に話してはいけない』と。

蘇った笙吾がしたいことは何だったのか? ほんとはこの部分に富樫流の味付けが欲しかった。

保険金ウンヌンという下りが悪いのではない。でも、笙吾が取るべき行動はもっと別のことでも良かったんじゃないかな、とボクは思う。

動揺した奏は笙吾と最後に逢った橋の欄干に彼のハーモニカを持ってやって来る。そこへ駆けつける笙吾。ポスターにもなっているこの二人が何もわからないまますれ違うシーンは、切ない。このシーンのためだけにこの映画が存在していると言っても過言ではないような気がする。
ボクのお気に入りのシーンはもう一つ別にもある。姉が担ぎこまれた病院の入り口で、治療を手伝おうか逡巡している奏に笙吾が叫ぶ「情けないこと言ってんじゃないよ!」。ここでボクの涙腺は少し切れてしまった。ここに至る伏線にエリックツアン(いやいや、國村隼)の存在があるんですよね。

涙腺刺激されまくりの催涙ムーヴィー。お出かけの際には必ずハンカチを手に持っていてくださいね。
この映画の韓国版リメイクも楽しみだなぁ、作ってくれないかな?


今回は梅田のナビオTOHOプレックスの#5で観ました。初日の13:00からの回。この回は満席でチケットは売切れ。
しかし、この#5はあかん。ボクが座ったB-5の席は座席正面にはスクリーンが無い。身体を捻じ曲げて映画を観なければならない。まるで、テレビのすぐ横に寝転がってブラウン管を見上るようなもんだ。こんなひどい席を指定しておいて通常の料金を取るとは許し難い。お客さんを舐めているとしか考えられない。
しかも、ロードショー公開初日の映画をこんなひどいスクリーンで上映するか、普通。
ボクたちは、窓口に行ってチケットを買うまで、その映画がナビオのどのスクリーンで上映されるのかを知ることは出来ない。そして、買って初めて環境が劣悪な#5で上映されることを知る。お客さんはナビオで上映されるからには、素晴らしい環境で鑑賞出来ると思って足を運んでいるのに、これってほとんど詐欺同然。同じ料金を払って、#5で上映される映画を観せられることに納得出来ない!
これだけ鑑賞する環境が違うのなら、せめて料金体系を見直すか、一層のこと#5スクリーンは即刻閉鎖すべきだと思う。
こんなこと続けていたら、ますます映画館に来る人が減ってしまうょ。この日#5スクリーンで端っこの席をあてがわれた人は、間違いなくもう二度とナビオには足を運んでくれないと思う。
東宝の関係者の人は、一度自腹を切って#5の前列端の席で映画をご覧になることをオススメします。自社の旗艦スクリーンがどれだけヒドイのかを自分の目で確かめるべきだろう。
せっかくの富樫森監督の新作だけど、これだけは腹の虫が収まらないょ!
この件を除けば、まずますのオススメです。

おしまい。