「刑務所の中」

なんともはや...


  

続けてこの日2本目はガーデンシネマで「刑務所の中」。
密かにヒット中というウワサを耳にしている。場内はほぼ満席。休日だとは言え、凄いね。客層もバラエティに富んでいる。ボクの隣りに座ったのは普段のガーデンでは絶対に見かけないようなおっちゃんだ(ここに来る途中にあるウインズでは珍しくとも何ともないおっちゃんだけどね)。

しかし、これが何と言うか、正直に言うと「冴えない」映画だ。
特にこれと言ったストーリーは無く、幾つかのエピソードに区切られている。それぞれのエピソードや小ネタで笑わせてはくれるんだけど、正直「それがどうした」って気がしないでもない。

なるほど、刑務所の塀の向こう側はこんなふうな毎日が繰り広げられているのか。そんなことは良くわかる。要は、ちょっとした「怖いモノ見たさ」なんだな、この映画は。
山崎努演じるハナワと同居する雑居房の面々は個性的でなかなか面白い。でも抑圧されていると感じるよりも、受刑者の皆さんはあまりにもご自分たちの立場を受け入れちゃっていて、そうこうするうちに居心地が良くなってくるんだから始末が悪い。
冷めた目で見ればハナワなんて性格異常者でマゾヒストやで...。

特にエグイ場面はありません。淡々と日記風に綴られていく。
この映画を観ながら考えたことは、この塀の内側でハナワ自身はどう考えたのか、どう変わったのか? と言うことだ。当たり障りのない事柄に関してはハナワの独白は入る、でも、肝心な時にはスッと流されてしまう(っちゅうか、他人に対してはこの人決して論評しないのね、個性として受け入れてしまっている)。
自分の犯した罪に対して全く反省していない受刑者の発言を聞いたとき、ハナワはどう思ったのか、仮出獄間近でシャバに戻りたくない受刑者の後ろ姿を見てどう考えたのか、常に看守の“先生”にゴマをすり続ける男に対してどんな感情を抱いていたのか? そんなことが全くこっちには伝わってこなかった(そんなこといちいち考えていたら、塀の中ではやっていけないのかなぁ)。
いささか踏み込みが浅い、甘いエピソードばかりなのが物足りない。
まっ「怖いモノ見たさ」だから、そんなこと誰も期待していないのかもしれないけどね。

塀の外側で安穏と毎日を過ごしているボクにとっては、なかなか興味深かったのも事実です。少しくらいなら、入ってもいいかな、なんて思ってしまう。
しかし、少し前に受刑者が如何に抑圧され人権を蹂躙されているのかというテーマで書かれた本を読んだばかりなので、なんかこの映画はもう一つピンと来なかったのも確かです。
最近、刑務所の刑務官が相次いで逮捕されたりしてるしなぁ...。

山崎努は相変わらずの“怪演”。この人この役を随分楽しんだような気がします。香川照之、田口トモロヲもイイ芝居してます。大杉漣、窪塚洋介、椎名桔 平もちょろっと出演(なかなか豪華だ)。

オススメはしませんが、塀の中に興味をお持ちの方はどうぞ!

おしまい。