「トゥルー・ストーリー」

サマドの足を巡る


  

ニッポン、ちゃちゃちゃ!
一次リーグを突破して、ベスト16に入れればいいな、とは思っていたけど、ほんとに勝ち進むとは!
金曜は午後から休んで家のテレビで応援。稲本を外して森島を投入したあたりトルシエ監督はなかなか冴えている。森島は入って即ゴールだし、市川も2点目に絡んでいた。この勢いでトルコも撃破だ!
この試合を見ていて、ちょっと気になったのはチュニジアの元気の無さ。チュニジアは日本から2点差以上の点差で勝てば一次リーグ突破出来たのに、試合開始直後から前がかりになって攻めて来なかった。まるで引き分け狙いかのような雰囲気でさえあった。これっておかしい。ひょっとして、食事に毒でも盛られていたのか?
夜の試合では韓国もベスト16入りを決めましたね。おめでとうございます。韓国は引き分けでも良かった。それでもがむしゃらに攻めて勝利をもぎ取った。もちろん、二人も退場者を出してしまったポルトガルには勝ち目は無かったけどね。ボクとしてはこの組からは韓国とポルトガルに残ってもらい、あと一試合はルイ・コスタのプレーが見たかったんだけど...。

日本勝利の余韻が残る土曜の朝に観にいったのはイランの映画。
ガーデンシネマのあるフロアに上がっていったら、まだ開場していなくて長蛇の列だ。この日が初日とは言え、びっくりしていたら、この列を作っている人のほとんどは「エトワール」を観る人だった。それでも「トゥルー・ストーリー」も50名ほどの入りだから立派ですね。

ちょっと不思議な映画だ。
フィクションとドキュメンタリーが入り混じった何とも言えない味わいの作品。

イランの映画監督・アボルファズル・ジャリリは、新しい映画に出演する少年を探している。プロの役者を使うのではなく、主演の少年は素人から選びたいと考えているのだ。学校の前で子供たちを待ち構えて、たくさんの少年に会うがなかなかメガネにかなう子供はいない。
そんなある晩、立ち寄ったパン屋で働いているサマドを一目見て気に入ってしまう。彼こそ探していた子役だ!
カメラテストの日、監督はサマドの足が悪いのに気が付く。出会ったときはこの少年の足に気がつかなかったのだ。ジャリリは、映画にはようやく見つけたこの少年しかいないと思っているが、医者に見せるとこの足が相当悪いことがわかる。
監督は悩む。撮影の間、治療を延ばすか、それとも今、手術を受けさせて治るのを待つか。手術を受けても完治するかどうかはわからないと言う。
サマドは貧しく、ジャリリに出会わなければ、満足な治療も手術も受けることは出来ない。でも、出会ってしまった以上、ジャリリはサマドの足を治してやりたいと思う。そこで、ジャリリはあることを思いつく。
新作の撮影は延期することにする。そして、その代わりにサマドの足の治療過程をドキュメンタリーとして撮影していくという計画だ。
そのため、ジャリリは奔走を始める。サマドのこれまでの半生を振り返る撮影や、地方にある彼の実家への訪問。そして、何よりも苦労したのがサマドの足を治してくれる医者を見つけること、さらに治療と手術の過程の撮影許可してもらうことだ。

この映画は100%のドキュメンタリーではないと思う。新作の製作を止めた時点で、このドキュメンタリー用に撮影しなおした部分もあるはずだと思う。そのへんが混じり合っていて、何とも言えない味わいになっている。途中で挿入されるエピソードで、サマドが街で知り合った少女をジャリリ監督に推薦するくだりは面白かった。
サマドの怪我のように満足な治療を受けられないことは、イランでは珍しくないのだと思う。今の日本では考えられないような理由で、数多くの子供たちが命を落としているのだろうな。だからボクは、この映画を観て「サマドは足が治って良かったな」なんて素直に喜ぶことはなかった。サマドは運が良かったんだ、とも思わない。

ジャリリ監督とサマドの関係がべたべたしていないのがいい。ちょっと突き放した関係がいい。
96年の作品。今週はモーニングショーで、来週はレイトショーで上映です。平日はそんなに多いお客さんは入っていないと思います。

おしまい。