「花様年華」

大人の恋はプラトニック


  

金曜日は仕事で神戸方面に出掛けていました。仕事を終え、梅田に戻る前に駅の売店で、ふと買ったのが読売新聞の夕刊。
土曜日に封切りされる映画が多いので、映画館の広告が多く出ているし、記事中にも映画のネタが取り上げられている。「ふむふむ、『タイタンズを忘れない』はフットボールの映画みたいやから時間があったら観にいこか」なんてのんきに読んでいたら、記事下広告に「花様年華」の広告もある。
「明日からやったなぁ、いつ行こかなぁ」と思ってたら、その広告の中に、小さく「トニー・レオン初日舞台挨拶決定!」「ん!」「ウソやろ!わざわざトニー・レオンが大阪に来てくれるなんて信じられへん」と阪急電車の中で腰を抜かしてしまいました。
と、言うことで、誠に勝手ながら、土曜の予定は全てキャンセル(ごめんなさい!)。金曜の夜はテアトル梅田に整理券を入手するために並びに行きました(ごっつい人が並んでるんとちゃうやろかと心配しながら)。
が、拍子抜けするほど人が集まっていないやんか。映画館に取材したところ「今夜の夕刊でのみ告知した」とのこと、あの広告を目にした人だけがトニーに逢えるのだ!でも、並んでいる人の中には知ってる人もいるし、どこかの映画館で香港モノやってるときに見かけたことのある人もチラホラといらっしゃいました、今は携帯電話があるから横の連絡も素早いのね。

急遽決まったこの舞台挨拶のために8:50からの上映。朝の8:20にテアトル梅田に集合。ぼくとそーさんとそーさんの友人「ディープ・佐野(仮名)」さん、その他大勢。男性はボクたちの知人であり、香港の先輩でもある千葉さん(仮名)とボクを含めて5名のみ。立ち見用の整理券も出る大盛況。そら、トニー・レオンが来るんだもの当然やね。舞台挨拶は上映の後。

「まいど」
にこやかに出てきたトニー・レオンの第一声がこれや。誰が教えたんかなぁ。
映画のようにスーツ姿で出てくるのかと思ったら、薄手のニットのパーカーにジーンズ。気さくなお兄さんって感じ。でもボクより年下。とにかくかっこいい!でいながらかわいいね。なんか、とっても感激しました。これが、トニー・レオンやなくて、ジジ・レオンかシム・ウナさまやチャン・ツッイーやったら鼻血出してたよ。こんなに近くに大スターのトニー・レオンがいるんだもの。挨拶(?)そのものはたいしたことなくて、夢のように10数分は過ぎていったけど、この日は生のトニー・レオンに会った(観た?)だけで大満足。これで、マギー・チャンも一緒やったらもっと良かったのに。でもそれは贅沢。大満足の一日でした。


さて、ここからは映画のお話。

画面一杯に溢れる「紅」。赤や朱ではなく中華的な紅。そして、光と影が大胆に、交互に現れる。蕩々と流れるタンゴの調べが耳に残る。60年代の香港を舞台にした、感情を抑えた恋愛映画。登場人物が極端に少ない。その分、マギー・チャンとトニー・レオンの主役二人に焦点が当たっていて、濃密な恋模様が展開される。
一度もラブシーンは出てこない。キスシーンさえない。それでいて、この映画が「官能的」なのは二人の大人が醸し出す、何気ない素振り、視線の動き、指先や足もとだけのショットに感じさせるものがあるからか。
映画はある意味ボクたちの代弁者なのか、ボクたちが実生活では体験出来そうにない出来事を主人公たちがやってのけてくれる。だから、ちょっと煮え切らないトニー・レオンにいらいらするけど、かっこいいから許してしまう。

マギー・チャンはいったい何着のチャイナドレスをもっているんだろう?そのどれもが襟が高くて、タイトでかっこいい。この映画が香港で上映されて、チャイナドレスが流行ったのもうなずけるね。トニーもいつもきっちりスーツを着て、白いワイシャツに細身のタイ。いいなぁ、かっこいいぞ。

このところ続けて「人生もし、こうだったら」という作品を観ているんやけど、この「花様年華」もそう。
「想い出は、汚れたガラス越しで見るようでぼんやりしている。過去は何度でも見られるけれど、決して触れることはできない」
そうだよ、そんなことはもう百も承知なはずだけど、過去にすがりついてしまう、ひとってそんな生き物なんだよね。

香港映画が好きな人も、そうじゃない人にもオススメの一本です。ゴールデンウィーク中に是非どうぞ。サントラCDも欲しくなりますよ。
もう、トニー・レオンの舞台挨拶はないけどしばらく梅田Loft地下のテアトル梅田か心斎橋ソニータワー地下のシネマドゥで上映しています。

おしまい。